- 著者
-
平野 敏明
- 出版者
- 特定非営利活動法人バードリサーチ
- 雑誌
- Bird Research
- 巻号頁・発行日
- vol.1, pp.A25-A32, 2005
2004年 4月から 7月に栃木県宇都宮市において,セキレイ属 3種(セグロセキレイ,ハクセキレイ,キセキレイ)の生息分布と生息環境を比較するために,1984年に行なわれた調査(平野 1985)と同じ場所,同じ方法で調査を行なった.調査地は1984年と同様に500×500mの方形区545個に分けられた.各方形区を優占する環境をもとに建物密集地,住宅地,農耕地,大河川,工業団地,丘陵の 6つに分けると,1984年と比較して建物密集地と住宅地の方形区は増加したが,農耕地と丘陵の方形区は減少していた.セグロセキレイの生息分布とその環境は,1984年と比較して,有意な変化はみられなかった.しかし,ハクセキレイは生息分布と生息環境ともに著しく変化した.すなわち,2004年には1984年にほとんど記録されなかった農耕地や大河川に分布を拡大していた.そのため,セグロセキレイとハクセキレイのあいだに,生息環境に有意な違いはなくなった.このようなハクセキレイの生息分布の変化の原因の 1つとして,調査地の都市化による営巣場所の増加が考えられた.なお,キセキレイでは,生息環境に変化はなかったが,分布は有意に縮小した.