著者
萩原 時雄
出版者
The Genetics Society of Japan
雑誌
遺伝学雑誌 (ISSN:0021504X)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.107-116, 1938

アサガホは早咲種と晩咲種とに分けられる。この兩種間の雜種の開花時期は中間となり, F<sub>2</sub> では中間, 早咲, 晩咲の三種が 9:3:4 の比に分離する。F<sub>2</sub> 植物の開花時期と, それ等の F<sub>3</sub> 植物の開花時期の間には <i>r</i>=+0.907±0.0187 なる關係がある。<br>そこで開花時期は遺傳する形質で, 晩咲は早咲きに對して劣性で, 少なくとも二對の因子即ち早咲因子 early (<i>e<sub>a</sub></i>) と晩咲因子 late (<i>l<sub>a</sub></i>) が關與する。日照の制限で開花の早められるのは勿論, 開花時期に關與する因子そのものが變化するためではない。花芽の分化の時期は開花時期に關する遺傳因子により決定される形質であるが, その遺傳因子が能力を發現して形質を現するに至るに都合よき状態が日照の制限により早く招來さるるに原因するものと考へられる。<br>種子發芽の遲速も開花時期に影響する。遲く發芽すると概して開花も遲れる。遲い發芽が種皮の堅いのに原因する事がある。種皮の堅いために遲く發芽する形質は優性であるらしい。<br>白色種皮のものは黒色種皮のものより若干發芽が早いから開花も若干早くなるものがある。<br>尚, 花の着生位置も開花の早晩に關係がある。莖の下部殆んど地際に花の咲くものは precocious (<i>p<sub>c</sub></i>) の因子に原因するもので早く咲く。然し, 是れと反對に下方の花芽が萎縮して上部のものだけ發達するものは tardy (<i>t<sub>a</sub></i>) の因子に關するもので極めて晩咲となる。因に <i>t<sub>a</sub></i> 因子は立田葉 maple (<i>m</i>) 因子とリンケーヂを有す。又, 晩咲因子 <i>la</i> は孔雀葉 pear (<i>p</i>) とリンケーヂを有す。

言及状況

外部データベース (DOI)

Twitter (1 users, 1 posts, 0 favorites)

こんな論文どうですか? アサガホの開花時期の遺傳に就て,1938 http://ci.nii.ac.jp/naid/130000062577 アサガホは早咲種と晩咲種とに分けられる。この兩種間の雜種の開花時期は中間となり, F2 では中間, 早咲, 晩咲の三種が 9:3:4 の比

収集済み URL リスト