著者
中條 金兵衞
出版者
The Ceramic Society of Japan
雑誌
大日本窯業協會雑誌 (ISSN:03669998)
巻号頁・発行日
vol.47, no.562, pp.535-542, 1939

この第6報は, 第5報に詳説したAN型新風篩器に就て決定さるべき諸要項並びに操作, 及びそれ等の實用的利用法に關する記述で, その要約を順を追つて箇條書きに列擧すると次の如くである.<br>(i) 先づ粉末の細かさを知る爲に, それを粒子の大きさに從つて分割する際, 限界に立つべき粒子の徑を顯微鏡下に測定する爲のプレパラート作製法の簡單にして恒常性ある方法を紹介説明した.<br>(ii) 次に粒子の大きさを實測するに際して, 如何なる粒子徑の定義に依るを簡明且合理的とするかを檢討し, 結局200乃至400個限界粒子の長さ<i>l</i>, 幅<i>b</i>を測定し,<br>(<i>l</i>+<i>b</i>/2)<sub>m</sub>=<i>l<sub>m</sub></i>+<i>b<sup>w</sup></i>/2<br>によつて表示するの實用性を認めた.<br>(iii) 限界粒子徑の大きさを如何樣にとるかに就て, 諸家の研究に徴し, 筆者の研究に俟つて,<br>(<i>l</i>+<i>b</i>/2)<i><sub>m</sub></i>=15.0μ<br>と決定した.<br>(iv) 試驗に供する粉末の量に關し, 50g又はそれ以上にとるべしといふ一部の主張に批判を加へ, 精度と時間とを考慮した測定器固有の量を選定すべきことを述べ, AN型に於ては20gを適當とする結論に達した.<br>(v) 風篩を打切るべき終點の決定は, 風篩器の性能に應じてなさるべきで, AN型は分離能力大なる點よりして, 10分間の吹上げ量1%以下となる時刻を以てすることが出來る. 從つて風篩時間は40-50分にて足る.<br>(vi) 風篩筒内壁には多數粒子附着し, これが試驗精度を低める因をなすので, 測定中一度送風を斷つて内面を清掃する必要はあるが, それは唯々一囘にて足ることを確めた.<br>(vii) 實用的風篩器は日常的な試驗條件, 例へで室温, セメント比重等の變動に因つても, その精度に左程の影響を受けはいことが必要で, 實際, 限界粒子徑15μに對して常温の開き10℃は0.21μ, 比重1.2%の不同は0.18μの誤差を起すに過ぎぬ.<br>(viii) AN型風篩器はその構造の堅牢, 簡潔と操作の單純, 確實との爲, 未經驗者にても容易に着手し得て, 唯々1囘にてその試驗成績は0.3%内外の精度に達することが出來る.<br>(ix) 豫備試驗に於て, セメント風篩の限界粒子徑が15.0μを與ふる樣に風量を豫め決定する爲には普通, ガスメーターを使用するが, 精確な測定は厄介である. 確實にして實用的な方法は, 標準粉末の殘滓量が規定の數値に達する樣な風量を發見するに在り, この方法の價値を述べた.<br>(x) AN型にて風篩したセメントの殘滓より, 比表面積を直接, 容易に求め得る2つの表を作製し, その利用法を示した.<br>(xi) AN型風篩器の考案, 操作の決定には豫め要望さるる諸原則を樹て, これに適合するやう研究を進めて來たのであるが, 第5, 6報を省察して, その略々充されてゐることを知ることが出來た.<br>要するに, 以上第5, 6報は第1, 2, 3, 4報に於ける基本的研究の基礎上に立つて, これを實用化する目的を以て爲された探究に關するもので, 適切なる装置と操作とによつて40-50分にして眞値に近ぎ表面積を求め得ることを叙述したのである.<br>尚, この試驗研究に多大の御援助と御指導とを賜つた淺野セメント技術顧問藤井光藏氏に深甚の謝意を表する次第である.

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