- 著者
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西村 範夫
冨山 宏平
- 出版者
- The Phytopathological Society of Japan
- 雑誌
- 日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
- 巻号頁・発行日
- vol.44, no.2, pp.159-166, 1978
- 被引用文献数
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5
ジャガイモ品種リシリ(R<sub>1</sub>-gene)およびダンシャク(r-gene)の塊茎を厚さ1mmのスライスにして24時間,18C中に静置した。ジャガイモ疫病菌race 0またはrace 1を接種し,一定時間後に<sup>3</sup>H-ロイシン,H<sub>3</sub><sup>32</sup>PO<sub>4</sub>または<sup>86</sup>RbClを50分間,接種面から吸収させた。磨砕した後,20,000×g上清部の放射能活性を測定した。接種1.4時間後に<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は無接種区に比較して約25%低下した。この時間に,ほとんどの遊走子は発芽し始めているが宿主細胞には侵入していなかった。接種2.4時間後から<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの吸収量は,親和性の組み合せに比較して非親和性の組み合せで顕著に低下した。この時間に非親和性の組み合せにおいても宿主の細胞死はほとんど起っていなかった。<sup>86</sup>Rbの吸収では,非親和性菌を接種したスライスの吸収量は非感染および親和性菌に感染したスライスより高かった。また10Cで吸収させると差はほとんどなくなった。<br><sup>3</sup>H-ロイシンによる予備実験の結果から20,000×g上清部の放射能活性をスライスへの取り込み量とみなすことができる。以上の結果は感染初期(侵入菌糸の貫入とほとんど同時)に宿主原形質膜が感染の影響を受けることを示す。また,親和性,非親和性の認識が侵入菌糸の貫入とほとんど同時におこなわれていることを示していると考えられる。また<sup>86</sup>Rbの結果は<sup>3</sup>H-ロイシンおよび<sup>32</sup>Pの場合と異なるが,その理由は不明である。