著者
澤 昭裕
出版者
JAPAN TECHNICAL ASSOCIATION OF THE PULP AND PAPER INDUSTRY
雑誌
紙パ技協誌 (ISSN:0022815X)
巻号頁・発行日
vol.65, no.12, pp.1238-1243, 2011

3月11日の東日本大震災後,日本のエネルギー政策が大きく見直されようとしている。エネルギー政策の見直しにあたり整理すべき論点として,(1)エネルギーの「安定供給」の確保 (2)エネルギーの供給責任とコスト負担のあり方 (3)安定供給を担えるエネルギー産業の編成 の3点がある。これらの論点について,政策を立案・実施する責任のあり方も十分考慮し,整理する。<BR>電力の安定供給の確保については,電源の種類,タイミング,供給主体,場所等の計画を策定し,反原発か原発推進かという対立的で不毛な論争に終止符を打つべきである。石油危機による教訓は,エネルギーは安定供給が第一に重要であり,そのためにはエネルギー源を多様化しておくべきである,ということだ。石油危機後,日本は電源の多様化を進め,震災前は原子力,天然ガス,石炭がそれぞれ発電電力量の20~30%を担うバランスのとれた電源構成となっていた。自然エネルギーは,まだ1.1%しかなく,すぐに原子力を代替することはできない。こうした事実を踏まえ,今後のエネルギー構成を考えて行くべきである。<BR>また,供給責任とコスト負担については,自由化が進展した際,需給がひっ迫していない平時は余剰となる設備を誰が所有・維持するのかという論点を考えなければならない。現在の原子力損害賠償スキームには問題点があり,国策として原子力を進めてきた国の責任が十分とはいえない。<BR>エネルギー産業の編成の方向性としては,国際資源の獲得における交渉力などの面から,大規模化・統合化・総合化を検討すべきである。

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