著者
山村 武彦 佐々木 紀彦
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.61-69, 1990
被引用文献数
1

対比較対照質問法による各60個の関係質問及び対照質問が含まれる20例の精神生理学的虚偽検出ポリグラフ記録の心拍反応の変化について分析した.資料に対する判定結果は, 半数の虚偽判定が被検者の有罪宣告 (虚偽事象), 残り半数の真実判定が容疑事実無し (真実事象) という法的結果により確認された.質問提示時の6拍を質問期間, 返答時10拍を返答期間として, それぞれ質問表提示前5拍の値との比を求めて心拍の変化とした.その結果, トニックな心拍変化において, 真実事象に較べ虚偽事象で心拍が増大していた.フェイジックな心拍では, 虚偽事象の質問期間中の関係質問と対照質問, 真実事象の質問期間中の関係質問に対して加速された.一方, 返答期間中には有意な心拍の変化は指摘されなかった.<BR>これらの結果は, 実務の虚偽検出事態では, トニックな心拍変化が虚偽と真実の識別に重要な役割を担っているが, フェイジックな心拍変化は見かけ上有効でない事が指摘された.従って, 実務事態では, 被検者の構えによる注意過程由来性の心拍変化が重要であると考えられた.

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