著者
廣岡 卓 石井 英夫
出版者
日本植物病理學會
雑誌
日本植物病理学会報 (ISSN:00319473)
巻号頁・発行日
vol.80, no.100, pp.S172-S178, 2014
被引用文献数
1

病害防除において,総合的病害虫管理(IPM)の基幹になるのは薬剤防除である。薬剤防除の歴史は,1800年代に使用が開始された石灰硫黄合剤やボルドー液を端緒に,病原菌の多くの生化学的作用点を阻害し保護的作用が主体の殺菌剤,いわゆる多作用点阻害剤で始まる。1960年代になり,病原菌の特異的な部位を阻害することによって病害防除効果を発揮する特異作用点阻害剤が導入された。特異作用点阻害剤は,浸透移行性があり予防および治療効果を併せ持つことが多いことから防除適期が広く,半世紀の間に殺菌剤の主流となった(Knight et al.,1997; Morton and Staub,2008)。殺菌剤は,企業の研究開発プロセスを経て最終化され,各国の農薬登録を取得した後に初めて農業生産者に使用される。ここでは,半世紀にわたる薬剤防除の動向を述べるとともに,(i) 殺菌剤市場,(ii) 作用機構による殺菌剤の分類,(iii) 薬剤防除の実例として,日本におけるイネいもち病および薬剤防除を取巻く諸問題,欧州におけるムギ病害,ブラジルにおけるダイズ病害,(iv)日本における殺菌剤耐性問題とその対策,について考察した。

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