- 著者
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和久 利彦
- 出版者
- 日本腹部救急医学会
- 雑誌
- 日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
- 巻号頁・発行日
- vol.36, no.1, pp.169-172, 2016
症例は26歳,女性。自転車同士の衝突の際,ハンドル先端で上腹部を強打した。増強する上腹部痛で受傷4時間後に救急搬送された。腹部全体の圧痛,上腹部の腹膜刺激症状,血中アミラーゼ高値,腹部CTでの液体貯留,膵体部の30mm大の高吸収域から主膵管損傷を疑い,受傷6時間後に緊急手術を施行した。膵体部でⅢb型の膵損傷を呈していたが,他臓器に損傷は認めなかった。術式は,膵脾機能温存を図るためBracey法を選択した。術後は,縫合不全や膵液瘻もなく経過し,第28病日目に退院した。術後8年目の現在,膵内外分泌能に異常はなく,尾側膵管の開存性は保たれていると考えられた。バイタルが安定したⅢb型膵体部損傷の術式として,Bracey法も安全な術式であると考えられる。