著者
仲町 知帆
出版者
日本イスパニヤ学会
雑誌
HISPANICA / HISPÁNICA (ISSN:09107789)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.57, pp.69-90, 2013

カルメン・マルティン・ガイテ(Carmen Mart&iacute;n Gaite, 1925-2000)の『マンハッタンの赤ずきんちゃん』(<i>Caperucita en Manhattan</i>, 1900)は幸せを求めるすべての人のための物語である。ペローの童話を下敷きに、舞台をマンハッタンに移し、親しみのある人物を取り揃えた現代版『赤ずきんちゃん』である。本稿では童話について概観し、次に当作品の人物について分析する。ガイテの行った改作について考察しながら作品のメッセージを明らかにする。読者は、苦難を克服し夢を叶える喜びに向かって進む主人公に共感する一方で、様々な文学的価値や感慨深い史実、心に響く音楽や映画の一端に触れ、知的好奇心を満たすことになるだろう。ガイテは本来の童話の効果を部分的に継承しつつも批判精神と自由の意思を持ってその限界に挑み、結果として、童話とも小説ともとれる独特な物語を誕生させたと結論づけられる。

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