著者
ゴルシコフ ビクトル
出版者
学校法人 開智学園 開智国際大学
雑誌
開智国際大学紀要
巻号頁・発行日
vol.18, pp.67-85, 2019

欧米による経済制裁やウクライナ危機などの負の外的影響を受け、ロシアの銀行は資金調達のために、アジアなどの新しい資本市場へのアクセスを図っている。本論文では、ロシア政府がスローガンとして掲げているアジアへのシフトが、銀行部門においてどの程度まで見られるか検討した。本論文はロシアにおける中国・日本・韓国を含むアジアからの外国銀行の行動様式(business activities)を研究対象とし、とりわけ、その活動内容を分析している。著者は、アジアの銀行の世界ランキングが高いにも関わらず、ロシアにおけるその活動が非常に限定的であると指摘した。ロシア銀行部門対内外直接投資におけるアジアの銀行の割合が少なく、短期資本が大きな割合を占めている。アジアの銀行の多くはロシアが世界市場の原油価格の高騰によりもたらされた高度経済成長を経験した2000年代に参入している。中国の銀行は先発者として参入しているが、日本からの銀行は国内子銀行支店数において首位を占めている。概して、アジアの銀行の現地法人の財務諸表を用いて貸出残高及び預金残高の分析を行い、その主な活動はホーム国の顧客へのサポート、ロシア大手企業及び外資系企業への融資、ロシアの銀行への貸出業務であり、一部の銀行はロシア中小企業向けの融資とロシア政府の国債を購入していることが明らかとなった。リテール業務は主に自動車ローンで構成され、自動車ビジネス関連の日本の銀行がこのニッチ市場を積極的に展開している。加えて、本論文では、アジアの銀行の貸出残高構成が少数顧客へ集中していること、融資は特定産業へ傾斜していること、短期的な融資が圧倒的であることを指摘した。したがって、アジアの銀行はロシアが極めて重要としている製造業への海外直接投資の資金調達を積極的に行なっているとは言い難い。対ロシア制裁の中で、ロシアはアジアへのシフト、とりわけ、中国との政治経済の協力強化を余儀無くされているが、短期的にこのような政策が新たな機会を生み出すかどうかは不明である。

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こんな論文どうですか? アジアの銀行のロシアへの参入方式に関する一考察(ゴルシコフ ビクトル),2019 https://t.co/dTBKjX7zRy 欧米による経済制裁やウクライナ危機などの負の外的影響を受け、ロシアの銀行は資金調達のために、ア…
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