著者
黛 岳郎
出版者
NHK放送文化研究所
雑誌
放送研究と調査 (ISSN:02880008)
巻号頁・発行日
vol.69, no.8, pp.2-19, 2019

アメリカのNETFLIXとAmazonプライム・ビデオが日本でサービスを開始して3年が経過した。放送事業者は独自の有料動画配信を展開し対抗する一方で、連携も深めている。有料動画配信のユーザーはどれくらいいて、今後、サービスはどこまで拡大していくのかについて、NHK放送文化研究所が2016年から毎年行っている世論調査「メディア利用動向調査」の結果分析を中心に考察した。有料動画配信市場の今後について分析を進めていくうえでは、2つの観点を設定した。WOWOWやスカパー!といった有料多チャンネル放送の加入者と、YouTubeなどの無料動画配信のユーザー、それぞれの調査結果を掘り下げることで、有料動画配信に加入する可能性があるのかをみていった。有料多チャンネル放送加入者については、現状においても有料動画配信に加入する動きがみられ、今後もこうした動きが続きそうだ。ただ、アメリカで起きているような有料多チャンネル放送から有料動画配信への乗り換え、いわゆる"コードカッティング"が日本で起きる可能性はしばらくの間は低いと思われる。一方、無料動画配信ユーザーについては、有料動画配信に加入する動きが増えるかどうか、断定できる材料は見つけられず、むしろ無料動画配信のサービス内容の充実が有料動画配信への加入を遠ざけているのかもしれない、という傾向を感じ取った。

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