- 著者
-
福井 清一
- 出版者
- 日本農業経済学会
- 雑誌
- 農業経済研究 (ISSN:03873234)
- 巻号頁・発行日
- vol.90, no.4, pp.321-331, 2019
<p>米国第一主義を掲げるトランプ政権は,途上国にとって好都合な貿易・投資の自由化の流れに逆行する政策を打ち出している.本稿のテーマは,米国第一主義にもとづく一連の貿易政策のもとで,貿易と投資の自由化の行方を占うことである.そのため,まず,WTO交渉が難航し遅れが生じた要因について検討する.次に,WTOの交渉難航と逆比例して増加してきたEPA・FTAのような地域協定,なかでもWTOのような多角的貿易交渉の進展に影響が大きいと考えられるメガFTAのうち,TPPおよびRCEPの将来について考察する.TPPについては,今後,米国抜きでも参加国が増加するのか,米国が再び参加する可能性があるのかについて考える.参加を希望する16ヵ国が協議を開始したRCEPについては,既存の2ヵ国間の協定の内容を比較することにより交渉の進展を阻害するであろう要素を明らかにし,交渉合意の可能性について検討する.さらに,EUや日本が検討しているWTO改革が米国のWTO回帰と中国によるWTOの規律遵守を促し得るのかについても検討を加え,最後に,今後の通商協定の行方について,やや途上国よりの立場から見解を述べたい.</p>