- 著者
-
谷川 恵一
- 出版者
- 日本近代文学会
- 雑誌
- 日本近代文学 (ISSN:05493749)
- 巻号頁・発行日
- vol.101, pp.1-15, 2019
<p>文学を含む明治以降の文化資料の網羅的な収集が開始されたのは一九二三年の関東大震災前後からである。集められた明治初期の資料は、価値のない作品として文学史が周縁に押しやってきたものが大部分であり、当時刊行が始まった大規模な文学全集にもほとんど収められることがなかった。こうした膨大な資料と向き合ったのは、明治文学史ではなく、二〇世紀前後に文献学という訳語とともに移入されたphilologyであった。三木清は、文学史研究の基礎に文献学を据えたが、文献学と文学史とはけっきょく別々の道を進んでいくことになった。</p>