著者
林 佐智代 江口 采花 遠藤 眞美 野本 たかと
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.332-339, 2020

<p>Stickler症候群(以下,STL)は,2型コラーゲン異常により進行性の眼疾患や耳疾患,骨・関節疾患,中顔面発育不良,口蓋裂,小顎症など多様な症状を認め,通常,知的能力障害を伴わない常染色体優性遺伝の疾患である.多くの合併症により摂食指導においても早期からの介入が必要と考えられるが,STLにおける摂食指導に関する報告はない.今回,偏食を認めるSTLに幼児期から摂食指導をしたので報告する.症例は,初診時年齢2歳9カ月の女児で,主訴は「食物が増えない」「固定した食物しか食べられない」であった.合併症としては口蓋裂,強度近視,滲出性中耳炎,脊椎骨端異形成,成長障害,過蓋咬合,狭口蓋であった.摂食場面では咀嚼運動を認めるものの,食事途中から疲労のため,緩慢な運動となることが観察された.摂取可能な食事はカレーライスや海苔佃煮ごはんなどであり,パリパリとした食感の食物には拒否を示した.以上のことから偏食がみられ,要因として,①視覚,聴覚の感覚障害,②小顎症,口蓋裂による摂食機能障害,③成長障害による食事中の疲労感とした.そこで,初診時の指導内容は主に感覚障害への対応を中心に行うこととし,視覚による食物へのこだわりの脱感作を目的に食内容指導を中心に行った.2歳11カ月から療育施設に通園するようになり,精神的,体力的負担により一時的に拒否は強くなった.指導として,児の好む食物を中心に食物を広げ,新しい食物に挑戦できたときは,褒めることで好ましい食行動を強化することとした.5歳10カ月まで食べむらはあるが徐々に自発的に新しい食物に挑戦する場面も増加した.摂食機能は,自食が多くなることで口唇閉鎖不全を認めるようになった.今後,成長期に関節炎など合併症を生じる場合もあるため,食事への影響を継続して観察し,支援する必要性が示唆された.</p>

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