著者
堀井 美那 川田 智弘 半田 真明
出版者
栃木県畜産試験場
雑誌
栃木県畜産試験場研究報告 (ISSN:02889536)
巻号頁・発行日
no.22, pp.41-46, 2007-02

肉牛肥育農家における経営の安定化を図るためには、肥育期間を短縮したうえで、高品質かつ枝肉重量に富む市場ニーズに即した牛肉を生産する技術開発が必要である。特に、育成期や肥育前期の飼料給与内容が肥育成績全体に影響を与えることから、この時期における飼料給与技術の検討が望まれている。そこで、本研究においては、黒毛和種去勢牛の肥育期間短縮時における粗飼料給与水準に着目し、肥育前期に乾草を多給することによる高品質牛肉の効率的生産技術について検討した。生後8ヵ月齢の黒毛和種去勢牛を、肥育前期(月齢8ヵ月-12ヵ月)、中期(月齢13ヵ月-22ヵ月)、後期(月齢23ヵ月-27ヵ月)の3つの時期に分けて19ヵ月間肥育した。試験は肥育前期の粗飼料給与水準として、粗飼料多給区(粗飼料割合40%)と粗飼料少給区(粗飼料割合15%)の2試験区を設定した。なお、粗飼料としてチモシー乾草を用いた。肥育中期以降は、粗飼料として稲ワラを用い、2試験区とも同じ給与飼料とした。試験の結果、現物飼料摂取量において肥育前期では、有意な差は認められなかった。しかし、中期では、粗飼料多給区が9.59±0.78kg、粗飼料少給区が8.32±0.52kg、後期ではそれぞれ9.90±0.42kg、8.27±0.77kgであった。なお、中期以降では粗飼料多給区において、有意に摂取量が多かった(P<0.01)。全期間を通して、体重、体高、胸囲について、両区に有意差は認められなかった。また、1日当たり増体量(CG)は、前期で粗飼料多給区1.02±0.08kg、粗飼料少給区1.26±0.12kgであり、粗飼料少給区において有意に発育が優れていた(P<0.01)。しかし、肥育中期では粗飼料多給区0.86±0.11kg、粗飼料少給区0.78±0.06kg、後期では粗飼料多給区0.81±0.11kg、粗飼料少給区0.56±0.14kgであり、肥育中期以降では、粗飼料多給区での増体が優れていた。枝肉成績は、粗飼料多給区のほうが、枝肉重量やロース芯面積が大きい傾向に、BMSNo.も高い傾向にあった。以上のことから、肥育前期において粗飼料(チモシー)を多給した場合、しない場合と比べて肥育中期以降での飼料摂取量や増体、枝肉成績に優れるため、粗飼料多給は、短期肥育における高品質牛肉生産に有効であると考えられた。

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こんな論文どうですか? 黒毛和種去勢牛の短期肥育における前期粗飼料給与水準が発育および肉質に及ぼす影響(堀井 美那ほか),2007 https://t.co/HTjEGNzWJt 肉牛肥育農家における経営の安定化を図るためには、肥育期間を短縮したう…

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