著者
佐藤 隆徳 畠山 勝徳 石田 正彦
出版者
農業技術研究機構野菜茶業研究所
雑誌
野菜茶業研究所研究報告 (ISSN:13466984)
巻号頁・発行日
no.5, pp.47-54, 2006-03

1)'はくさい中間母本農8号'は,低温をほとんど必要としない長日要求性の極晩抽性系統'つけな中間母本農2号'に日本型ハクサイを交雑し,後代で極晩抽性個体の選抜を繰り返すことにより育成された,結球部形状が日本型ハクサイに近い極晩抽性系統であり,2005年に中間母本登録された。2)'はくさい中間母本農8号'の晩抽性は,既存の晩抽性ハクサイ品種の'はるさかり','晩輝','幸村'よりも高い。さらに,野菜茶業研究所アブラナ科育種研究室で育成した抽だいに対する低温要求性の高い,'はくさい中間母本農6号'より晩抽性の高い系統である。3)'はくさい中間母本農8号'の「球のしまり」はゆるく,「球重」も軽く,ハクサイとしての実用形質は既存の晩抽性品種に比べ劣る。4)極晩抽性'はくさい中間母本農8号'と非晩抽性の'無双'のF1では,抽だいまでの日数(晩抽性の程度)は,両親のほぼ中間の値を示し,さらに同F2ではピークの位置は同じであるが分離しており,それぞれ両親の抽だい性程度に近いものが認められた。5)極晩抽性'はくさい中間母本農8号'と晩抽性でない'無双',さらにF1およびF2における抽だい性の分離状況から,'はくさい中間母本農8号'の極晩抽性には,比較的少数の遺伝子が関与しているものと推定される。6)分離世代であるF2において,'はくさい中間母本農8号'の晩抽性と同程度のものが約10%出現するので,育種操作で多数の個体を扱うことが比較的容易なハクサイの場合,選抜に十分な数の晩抽性個体を得ることが可能である。

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