出版者
農業技術研究機構中央農業総合研究センター
雑誌
中央農業総合研究センター研究報告 (ISSN:18816738)
巻号頁・発行日
no.2, pp.63-81, 2003-03

「めばえもち」は中央農業総合研究センター北陸研究センター(旧北陸農業試験場)で1988年に巨大胚の糯品種の育成を目的として「金南風」の巨大胚突然変異系統「EM-40」を母とし、「中部糯57号」(後のココノエモチ)を父として人工交配を行って育成された品種である。1994年から「北陸糯167号」の系統名で奨励品種決定調査等の試験を行ってきた結果、2002年9月3日に水稲農林糯382号に登録され、「めばえもち」と命名された。「めばえもち」は機能性成分GABAを多く含む巨大胚で糯という新しい特性を持った新品種であり、新たな機能性を持った加工食品等への新たな需要が見込まれ、とくに地域おこしの一環として餅を用いた商品開発に積極的な地域における普及が期待される。「めばえもち」の特性の概要は以下のとおりである。1. 出穂期は「こがねもち」よりやや遅く,成熟期は「こがねもち」よりやや早く,育成地では中生の早に属する糯種である。2. 稈長は「こがねもち」より16cm程短い短稈で,穂長はやや長く,穂数は多く,草型は偏穂数型であり,ふ先色は赤褐である。3. 収量は標肥栽培では「こがねもち」より少ないが,多肥栽培した場合には「こがねもち」より多収である。4. 耐倒伏性は「こがねもち」より強く,中である。5. 玄米品質は「こがねもち」よりやや劣り,中中である。6. 胚芽重は「こがねもち」「コシヒカリ」の約3倍あり,玄米重の7~8%程度を占める。7. 胚芽内に蓄積されるγ-アミノ酪酸(GABA)含量は発芽玄米で高く,「コシヒカリ」「こがねもち」の約2倍のGABAを含む。8. 餅の食味は「こがねもち」よりやや劣り,中上で,柔らかい食感を長時間保持することが可能である。9. 健康食品として発芽玄米餅,巨大胚芽を用いた胚芽入り餅・団子生地,甘酒,おこし様菓子等の加工利用も考えられる。10. いもち病真性抵抗性遺伝子Piaを持つと推定され,葉いもち圃場抵抗性は中,穂いもち圃場抵抗性はやや強である。11. 白葉枯病抵抗性は中,縞葉枯病に対しては罹病性で,障害型耐冷性は弱で,穂発芽性は中である。「めばえもち」は,東北中南部から九州に至る広い地域で新規用途を目的とした栽培が可能と考えられる。栽培にあたっては種子の出芽が劣るので,播種量を多くし,過度な追肥は避け,刈り遅れに注意する。

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こんな論文どうですか? 水稲新品種「めばえもち」の育成(上原 泰樹ほか),2003 http://t.co/OZUCQSzOzv 「めばえもち」…

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