著者
[ソウ] 賢美
出版者
経済地理学会
雑誌
経済地理学年報 (ISSN:00045683)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.57-71, 1995

本研究の目的は, 在日韓国・朝鮮人高齢者の居住の背景や生活の現状を, その就業形態を中心に把握することである. 調査地域には, 在日韓国・朝鮮人の集住地域の一つであり, 中小零細企業の集積地でもある東京都大田区を選んだ. 本稿では在日韓国・朝鮮人の居住の背景や就業の変遷を考察した上で, 55歳以上の者に対して聞き取り調査を行なった. 調査にあたっては, 民団資料にもとづき, 在日韓国人高齢者の就業の状況を明らかにした. また, 面接による聞き取り調査を行なって, その居住の背景と就業の変遷を考察した. 調査の結果, 大田区における在日韓国人高齢者のなかには, 零細工場の経営者や販売従事者が多かった. 特に販売従事者の場合, ほとんどが焼肉屋を中心とする飲食店経営者であった. また, 聞き取り調査の結果, 年金制度の不備により, かなりの高齢になるまで働いている者が多いことが明らかになった.