著者
[清原宣賢] [講]
出版者
[出版者不明]
巻号頁・発行日
1600

室町時代の学者清原宣賢が行った、『日本書紀』神代巻についての講義の聞き書き。神代巻は中世には神道書として尊重された。清原宣賢(1475-1550)は儒学の家清原氏を継ぎ、当代一の儒者として活躍、神道、和学にも造詣が深かった。本書の成立は大永8年(1528)ころとされ、古活字版で初めて刊行された。口語体を交えた講義筆記の体裁で記された、いわゆる「抄物(しょうもの)」で、当時の国語資料としても価値が高い。表記は漢字片仮名交じりだが、第2巻20丁表の山上憶良の和歌の部分のみ平仮名活字を使用。巻末に「於洛陽本能寺前町開板」の刊記がある。本能寺では慶長末年から寛永年間にかけ開版事業を行っており、門前の書肆の活字出版はその影響と考えられる。本書も寛永年間(1624-44)の刊行と推定される。表紙右下に「天游舎」と墨書。巻頭右下の印記は「平悳之印」「字曰元卿」か。上部の長方朱印は印文未詳。同種の伝本は稀れで、お茶の水図書館成簣堂文庫等の所蔵が知られる。