著者
アーネスト・コヒィ・ デイビス 馬場 卓也
出版者
全国数学教育学会
雑誌
数学教育学研究 : 全国数学教育学会誌 (ISSN:13412620)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.241-257, 2005

本研究は,ガーナにおける現職教員夜間研修プログラムが基礎学校教員の教科知識に与えた影響について,事例研究を行うことを目的としている。また同時に,教師がこの研修への参加動機を,自らを高めることとしていることについても確認しようというものである。この研修プログラムは,教員の質やその不足の問題を解決することが目的で,1998年に始められた。本プログラムの良い点は,研修を受講する教師が教壇に立ちながら,同時に研修も受けることができるということである。したがって教師は研修の中で新しく学習したことを,授業の中ですぐさま活用する事ができるのである。ところがこの研修プログラムの効果について,未だ研究がなされておらず,より良い研修を求めていく上で,まだ為すべきことは多数存在する。<br> そこで本研究では,ガーナ国中央州における現地調査を実施した。質問紙調査において,研修受講者58名,研修未受講者54名,校長40名,指導主事20名の有効回答を得た。さらに研修受講者の内6名が選出され,さらに6名の未受講者と合わせて計12名の教師の授業が観察され,さらにその内の受講者1名と未受講者3名より授業についてコメントを得た。このようにして収集されたデータに対して,平均や標準偏差などの記述統計による量的分析と,コメントの内容分析を行った。これらを通じて本事例では,この研修プログラムにおいて基礎学校教師の数学教科知識が高まったが,他方で未だに分数を指導する上での問題が存在していることが分かった。