著者
本田 彰子 牛久保 美津子 Honda Akiko 牛久保 美津子 ウシクボ ミツコ Ushikubo Mitsuko
出版者
千葉大学看護学部
雑誌
千葉大学看護学部紀要 (ISSN:03877272)
巻号頁・発行日
no.26, pp.39-43, 2004-03

本研究の目的は,医療施設に就職した看護師の臨床現場で1年聞の体験の内容から,職場適応の実際を表し,新人看護職者が仕事を継続することに影響する要因を明らかにすることである.卒後1年を経過した8名の看護師に対して,臨床現場での困った事,その時の対処,助けとなったもの等に関する内容の面接調査を行い,質的帰納的方法で分析した.人とのかかわりや他者の存在に閥する6サブカテゴリーは『安寧・励ましである患者の存在』『看護の責任を果たし,尊重すべき患者の存在』『困難の元となる先輩看護師の存在』『育て導く先輩看護師の存在』『分かち合う同期看護師の存在』『安らぎを与えてくれる家族の存在』であった.職場適応の方法に関する4サブカテゴリーは『必死・耐える・やり過ごす対処』『人間関係や組織構造を読み取る対処』『納得・気付き・見習う対処』『離職選択へ向かう対処』であった.新人看護職者の仕事継続に影響する要因としては,看護の役割を自覚させる患者の存在,看護実践能力の未熟さを自覚させ,それを実務レベルで支援する先輩看護師の存在,情緒的安定を与える同僚看護師や家族の存在がある.また,新人看護師はできないと思いつつも必死に耐え,かつやり過ごす対処をとるが,それだけでなく,人間関係や組織の構造を的確に捉え,職場適応におけるあるべき姿を先輩看護師に見出し,自分自身を変える対処をとることにより離職選択をせず看護の職務継続の意識を持つようになると考える.