著者
太下 義之 オオシタ ヨシユキ
雑誌
静岡文化芸術大学研究紀要
巻号頁・発行日
vol.17, pp.133-150, 2017-03-31

本論文は,最初にSUAC 芸術経営統計を元に,自治体文化財団の概要について整理した。その結果,自治体文化財団の主要な業務は指定管理であり,文化芸術団体の支援は些末な位置づけしかないという実態を明らかにした。次に自治体文化財団の歴史を,国全体のマスタープランとも言える全国総合開発計画との関連も踏まえて考察した。その結果,全国で公立文化施設が多数整備された90年代において,文化振興ではなく,日米構造協議を契機とする内需拡大のために,国からの強い働きかけもあって地方債が多額に発行され,それを活用して箱物が多数整備されたことを明らかにした。最後に自治体文化財団の意義と課題を,「公立文化施設の柔軟な運営/二層の職員構成」「文化振興の専門職のプリカリアート化」「地域の文化政策自体の弱体化」「助成財団としての文化振興/助成金額の減少」「文化政策における自治体文化財団の位置づけの無さ」の5項目に整理した。