著者
小窪 輝吉 コクボ テルヨシ Teruyoshi Kokubo
出版者
鹿児島国際大学福祉社会学部
雑誌
福祉社会学部論集 = Quarterly journal of welfare society (ISSN:13466321)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.49-64, 2018-12-01

社会的手抜き(social loafing)は集団作業における努力低下を指す。これは集団や組織に有害な影響を及ぼす現象であるので、それを除去する方策が多くの研究者から提唱されてきた。その一つに社会的アイデンティティ・アプローチに基づいて提唱された所属集団への社会的同一視を高める方策がある。これは、人が自分をある集団の一員としてカテゴリー化し、成員であることが自己アイデンティティに組み込まれていることを認識すると、人は集団への同一視を強めて集団のために一生懸命に働こうとするだろうと予想するものである。Haslam(2004)は、人が単独で仕事をする時よりも集団で仕事をする時に努力を強めて集団における動機づけ上昇が起こる現象を「社会的努力(sociallaboring)」と名付けた。本論文において、集団状況における社会的努力効果を見出した3件の研究(Worchel, Rothgerber, Day, Hart, &Butemeyer, 1998; vanDick, Stellmacher, Wagner, Lemmer, & Tissington, 2009; Hoigaard, Boen, Cuyper, & Peters, 2013)のレビューを行った。6つの実験のうち、社会的努力を見出したものもあったがそれを見出さない実験もあった。将来の研究では、課題特性と社会的努力の関係をさらに明確にしていく必要があろう。