著者
水元 芳 パンチャランティ ノングラック パラディパッセン マンダナ スミタシリ スティラック
出版者
日本国際保健医療学会
雑誌
国際保健医療 (ISSN:09176543)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.161-168, 2006

本研究は、近年増加する高血圧症が取り組むべき課題として掲げられるタイにおいて、異なる社会経済的階層人口が混在するナコンパトム県プトモントン地区での高血圧症と生活習慣に起因するリスク因子の究明を試みたものである。40歳以上の女性224名を対象とした症例対象研究であり、データは質問票を用いた面接法で収集された。<br>調査対象地区において、高血圧と最も関係の深い因子は肥満であった(OR=2.05, 95% CI=1.62-3.63)。糖尿病もまた同地区における高血圧のリスク因子であり(OR=2.42、95% CI=1.08-5.43)、肥満者で糖尿病を有する対象者が高血圧症を併発するリスクは通常の約4倍も高くなることが認められた(OR=4.10, 95% CI=1.17-15.72)。タイでは、一般的に塩分の過剰摂取が近年の高血圧症増加の主要な原因と考えられている、しかし、本研究結果では、高血圧症の有無と塩分摂取量の間に有意な関係は認められず、今後この対象地域で高血圧症対策のプログラムを展開させる際には体重コントロールを重点的に行うことが効果的であり、生活習慣病予防対策を講じる際には地域の人々の生活習慣に係る特性を踏まえたプログラム作成が効果的であることを示唆している。