著者
中島 明子 名取 史織 三善 勝代 ナカジマ アキコ ナトリ シオリ ミヨシ カツヨ Akiko NAKAJIMA Shiori NATORI KATSUYO MIYOSHI
雑誌
和洋女子大学紀要. 家政系編
巻号頁・発行日
no.41, pp.107-118, 2001-03-31

本稿は,「三世代にわたる生活文化の伝承と将来への展望」(1)に引き続き,和洋女子大学学生とその母親および祖母の三世代における生活文化について行った調査研究の内,住生活,暮らしの中の植物,および生活経営の3分野に関する報告である。1)住まいにかかわる生活文化 : (1)伝統行事は全体としてはやらない家庭が増加傾向にあり,住宅形態との相互関連が想定される。(2)環境と住み方の関係については,自然の調整と活用,自家処理から,設備化と社会的システムへの転用に変化してきている。(3)起居様式に関しては,第一世代(祖母)と第二世代(母親)がほぼ連続し,第三世代(学生),すなわち1980年代以降に急速に洋風化が進んでいることがわかった。2)暮らしの中の植物 : 伝統行事の伝承は,若い世代になるほど減少していく傾向にあるものの予想外に伝承されている。植物の調達をみても,自宅または近隣からが4割から5割を占め,比較的自然環境に恵まれた居住環境に住んでいる。しかし,庭の質をみると,生け垣は第三世代で2割と減少し,庭木も第三世代になると,鑑賞用の花木が増え,生活の洋風化と共に,自然の状態から切り離された庭づくりがされている。3)生活経営 : (1)家族で夕食を囲む頻度と近所づきあいが第三世代で少ないのは,当該世代の行動圏の拡大による。(2)家族が離れて暮らす場面に際しては,前向きに対処していこうとする姿勢が第三世代において認められた。(3)女性の就業と生き方については,第二,第三世代で第2位にあげられた「継続就業型」の将来可能性が予測される。(4)結婚を所与のものと捉えている割合は世代が若くなるほど減少しており,戦後の民主化によって両性の合意に基づくと謳われた結婚観は,確実に浸透してきている。