著者
西村 丈治 ニシムラ ジョウジ Joji NISHIMURA
雑誌
経営情報研究 : 摂南大学経営情報学部論集
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.29-38, 1994-07

"商法第222条1項に規定するところの,利益による償還株式の消却によって,資本金は名実ともに滅少しないとするのが現行の通説である。しかしながら,このような見解は,償還株式の消却によって,償還されない株式を保有する株主(残留株主)の株主持分は,一方において利益持分が滅少し,他方において資本持分が増加する点からみて疑問を抱かざるを得ない。結局,利益による償還株式の消却は,一方における資本金の払戻しと,他方における残留株主による利益の資本組入れの形での追加出資を伴う措置であり,後者に対して新株を発行しないために形式的に株式の消却,つまり特定の発行済株式を消滅せしめる措置にすぎないのではなかろうかとする疑問を提起した。"