著者
フォキル レザウル・カリム
出版者
国立国語研究所
雑誌
国立国語研究所論集 (ISSN:2186134X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.15-31, 2014-11

本研究の目的は,四つのパラメータ,即ちi)関係節における名詞化の作用,ii)主節と関係節の連携性,iii)参照的一貫性,iv)名詞句の接近可能性階層,に沿って,関係節における日本語対ベンガル語の対照分析を行い,日本語の関係節に見られる言語固有の特性を明らかにすることである。関係節における日本語固有の特性は,名詞句形成に必要な二つの条件:i)過程的条件として行われる名詞化の処理基準と,ii)実質的条件として満たし得る形態統語論的基準に基づくものである。そのためこの二つの条件は,名詞句の関係節としての解釈を導くものである。また,この条件を軸にした分析から,定形節から二段階の過程を経て名詞化され,定形節の何れかの項からなる名詞句が形成される,そのような名詞句のみが,関係節としての形態統語論的基準を満たすことを示す。つまり,このプロセスを経て形成された名詞句は,関係節としての解釈を受ける。なぜなら関係節の述語動詞が示すギャップの位置に生じ得る要素と主要部名詞が参照的一貫性を共有するからである。