著者
ルネ・ デュ・クロー 岡部 夕里
出版者
公益社団法人 日本人間ドック学会
雑誌
人間ドック (Ningen Dock) (ISSN:18801021)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.615-626, 2011 (Released:2012-03-28)
参考文献数
36

目的:著者らはオランダの公立病院を会場として,主に在蘭日本企業の社員とその家族を対象とした「在蘭日本人健康診断」を行っている.オランダ在住の日本人ではライフスタイルの変化により脂質値など動脈硬化性疾患リスク因子への影響が考えられる.本研究では,在蘭日本人駐在員におけるリスク因子分析およびリスク評価の結果に基づき,予防的見地からの脂質管理の重要性を明らかにする.方法:2003年1月から2010年9月までの間に実施された在蘭日本人健康診断の30歳以上の初回参加者,男性657名,女性513名の合計1,170名を対象に,性別と年齢,BMI,血圧,脂質値,空腹時血糖,喫煙,冠動脈疾患の家族歴,運動習慣,飲酒量の各データについて検討した.このデータに基づき,脂質を始めとする動脈硬化性疾患の危険因子を分析し,日本の既存のデータと統計的に比較した.結果:年齢調整後,LDLコレステロール,総コレステロール/HDLコレステロール比,空腹時血糖が本研究対象者の男性で日本のデータに比べ有意に高かった.また,高LDLコレステロール血症の有病率が他の危険因子を大きく上回った.男性の他の危険因子および女性では,本研究対象者が日本在住者より良い結果であった.結論:本研究対象者では脂質異常が動脈硬化性疾患の主な危険因子であり,他の因子の関与は少なかった.したがって,健康指導においては脂質管理に重点を置くべきである.