著者
一棟 宏子/萩原 美智子/中野 迪代/若井 希水子/金 貞仁/崔 在順 イチムネ ヒロコ/ハギワラ ミチコ/ナカノ ミチヨ/ワカイ キミコ/キム ジュンギン/チョイ ジェソン ICHIMUNE Hiroko/HAGIWARA Michiko/NAKANO Michiyo/WAKAI Kimiko/KIM Jungin/CHOI Jaesoon
雑誌
大阪樟蔭女子大学学芸学部論集
巻号頁・発行日
vol.45, pp.171-186, 2008-01-31

本研究は、分譲マンションの管理組合活動への参加困難層の負担を軽減しつつ組合の弱体化に対する支援と、建物と居住環境の管理レベルを一定に維持するしくみの検討を目指して、2005年度から取り組んでいる。その一環として、本報では2006年11月に京滋阪奈地区の管理組合(築30年以内)理事長を対象に実施したアンケート調査(有効回収59件、41.3%)とヒアリング事例調査(5件)による組合活動の実態を報告する。 アンケート調査の結果をみると、新築当初からの住民比率は、10年を超えた時点で新規居住者との入れ替えが急速に進むマンションとそうでないものに分かれる。賃貸住宅や空き家・事務所を抱えるマンションも多く、中には欠陥が疑われる工事の発見とその対応など、管理組合がかかえる問題は多様である。その中で、(1)築年数が古いマンションほど理事長は高齢化する傾向にあり、役員の世代交代をどのように進めていくか、(2)危機管理について理事長が居住者の基本的情報を把握していない事例が多く、どのようにリスク管理を進めていくか等が課題とされる。また、聞き取り調査から、(3)組合運営のための情報収集や支援に、専門家やNPO、他のマンションとの交流が大きな役割を果たしており、(4)当初設定された管理費用の見直しを行った事例も多い。マンション管理には経営的視点、技術的視点、危機管理とコミュニティ育成の視点が重要といえる。さらに、これまでの研究成果とあわせて検討し、改めて日本における分譲マンションの今後の課題を整理した。