著者
鈴木 慎二郎 三上 昇
出版者
日本草地学会
雑誌
日本草地学会誌 (ISSN:04475933)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.372-380, 1982-02-28

2番草の刈取時期(晩秋草の備蓄開始時期)とその前後における窒素施肥との組合せが,晩秋草の草量と草質に与える影響について検討した。ポット植えしたオーチャードグラスの2番草を,8月10日,8月20日,8月30日および9月9日に刈取り,それぞれの刈取10日前あるいは10日後に,12kgN/10a相当の硫安を施した。各ポットはガラス室(高温区)あるいは網室(常温区)で生育させ,10月28日に刈取調査した。1.刈取10日前の施肥では,晩秋草の草量は平均的には少なかったが,刈取時期が遅くなることによる低下がみられなかった。一方,刈取後の施肥では,刈取時期が早いものの草量は多いが,刈取時期が遅くなることによる低下が著しかった。そのため,8月30日や9月9日からの備蓄では,刈取前施肥の方が草量が多くなるのがみられた。なお,草量は高温区において多かった。2.DCPとTDNの含量,およびin vitroの乾物と細胞壁構成物質の消化率は,刈取時期の遅いものほど高かった。しかし,栄養比は刈取時期の遅いものほど狭くなった。栄養価や消化率は高温区においてわずかに低かった。2番草の刈取前に施肥された牧草では,DCP含量が低いにもかかわらず,TDN含量や消化率は高く維持されるという特異な現象がみられた。すなわち,刈取前の窒素追肥によって,栄養比の巾の広い,低蛋白・高エネルギー型の晩秋草が得られることが分かった。晩秋草の草量と草質は,備蓄開始時期そのものよりも,それとの組合せによる施肥時期の影響を強く受けており,気温が低下してからの備蓄には,2番草の利用前追肥が有効な手段となる可能性のあることが示唆された。