著者
三宅 輝海
出版者
The Society of Resource Geology
雑誌
鉱山地質 (ISSN:00265209)
巻号頁・発行日
vol.38, no.209, pp.215-231, 1988

下川火山成塊状硫化物鉱床は126Maにクラ・イザナギおよびファラロン両プレート間の中央海嶺部に生成した.拡大軸における,循環海水に起因する熱水系が海底変成作用およびそれに引続く鉱化作用をもたらした.鉱床が沈澱している間に double diffusive 現象により塊状鉱および縞状鉱が形成された.鉱床は恐らく珪質の exhalite ないし熔岩により覆われたが,引続くテクトニックな運動により剥ぎ取られたものと思われる.日本海が開く前であったので鉱床を含む海洋地殻は海溝に近づくにつれ,シホテアリンの火山帯から供給されたタービダイトにより覆われた.日高累層群の堆積物および海洋地殻は斜め沈み込みに伴い,シートダイクの部分等がはぎ取られた.この付加体プリズムの一部が下川テクトノストラティグラフィック・ユニットとして知られ,複雑に変形した堆積物やメラソジェ帯によって特徴づけられる.下川鉱床はこのテクトニックな方向にほぼ平行に,連続して胚胎している.新生代の日本海の拡大に伴い,この下川複合岩体は現在の北海道日高帯に移動した.九州の槙峰,浅川両鉱床も同様な異地性起源と考えられる.