著者
瀧井 美緒 上田 純平 冨永 良喜
出版者
日本不安障害学会
雑誌
不安障害研究 (ISSN:18835619)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.10-19, 2013-02-01 (Released:2013-11-29)
参考文献数
20
被引用文献数
1 1

本研究の目的は広義のトラウマ(致死性のないトラウマ)と狭義のトラウマ(致死性のあるトラウマ)を区別し,トラウマ体験の違いによる外傷後ストレス反応と不安感受性,身体症状,抑うつ症状の差異を検討することであった。調査対象者は大学生など598名であった。身体症状尺度,不安感受性尺度,Beck Depression Inventory-II,出来事チェックリスト,PTSD診断基準Aに関するチェックリスト,改訂版出来事インパクト尺度を実施した。その結果,トラウマ体験の違いによる外傷後ストレス反応の差異は見られなかったが,外傷後ストレス反応,身体症状,抑うつ症状のすべてで不安感受性の影響が示された。以上の結果から外傷後ストレス反応の低減を図るためには,出来事の致死性の有無という視点だけでなく,広く外傷後ストレス反応をとらえ,身体症状や抑うつ症状,不安感受性について検討する必要性が示唆された。