著者
前田 宏明 恵谷 秀紀 多賀谷 昌史 奥 直彦 金 奉賀 中 真砂士 木下 直和 額田 忠篤
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.661-666, 1989-07-01

抄録 経頭蓋超音波ドプラ法を用いて中大脳動脈(MCA),脳底動脈(BA)の血流を非侵襲的に測定して,本法の再現性について検討した。健常成人15人に対して経頭蓋超音波ドプラ装置を用いて,側頭骨,後頭骨直下にプローブをあてMCA,BAの血流速を測定し,その最大,平均のドプラ偏位周波数を求めた。この測定を検者A,Bの間で,A,B,Aさらに日を改めてAと繰り返し,最初のAの測定値を元にして以後の測定値との間の変動係数を求めた。この結果から同一測定日内のA,A間,A,B間および異なる測定日間のA,A間の測定の再現性について検討した。同一測定日内のA,A間およびA,B間の再現性は,変動係数6-18%と比較的安定した値を示した。異なる測定日間のA,A間の測定の再現性は,同一測定日内の再現性よりも劣っていた。またMCA,BAの血流測定の再現性は,前者の方がより良好な再現性を示した。特に同一測定日内のうちのMCAの血流測定の再現性は,変動係数6-11%と良好な値を示した。本法は,簡便かつ非侵襲的な脳血流測定法として良好な再現性を示しており,ベッドサイドでの脳血流モニタリングや,急性または慢性の負荷に対する脳血流反応性の評価等にも応用可能な方法であると考えられた。