著者
中村 真 中尾 花奈子 西村 律子
出版者
江戸川大学
雑誌
江戸川大学紀要 = Bulletin of Edogawa University
巻号頁・発行日
no.30, pp.267-280, 2020-03

本稿は,衝動性が意欲低下を媒介して間接的に適応感の低さに影響するというモデルを考案し,その妥当性を検討することを目的に行われた実証的研究である。首都圏の四年制大学で心理学系学科に所属する学生を対象に質問紙調査を実施し,モデルの検証を行った。まず,衝動性,意欲低下,適応感の3 つの変数のうち,1 つの変数を制御変数とし,他の2 つの変数間の偏相関係数をすべての組み合わせで算出した結果,「衝動性」→「意欲低下」→「適応感の低さ」という因果関係を示唆する結果が得られた。これをふまえて,衝動性が意欲低下を促し,意欲低下が適応感に負の影響をもたらすことを示す因果モデルの検証をパス解析により探索的に行った。その結果,総じて,男女に共通して「思考・行動の制御不全」「熟慮・集中力の欠如」に特徴づけられる衝動性が,大学生活における意欲の低下を媒介して,適応感の低下を促すという想定した通りの因果関係が裏付けられた。 以上の分析結果に基づいて,衝動性から意欲低下および適応感に至る心理的プロセスについて考察し,今後の研究の課題を述べた。