- 著者
-
中村 勇士
今川 和彦
- 出版者
- JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
- 雑誌
- Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
- 巻号頁・発行日
- vol.28, no.4, pp.203-218, 2011 (Released:2011-11-10)
- 参考文献数
- 75
- 被引用文献数
-
7
哺乳類の子宮や胎盤では,多数の内在性レトロウイルス遺伝子が特異的に発現している.ヒトではSyncytin 1, 2が,マウスではSyncytin A, Bが,胎盤の形成に必須である栄養芽細胞の融合に関わっていることが明らかになってきた.ウサギやウシでもそれぞれに融合能を持つと思われる内在性レトロウイルス遺伝子の胎盤特異的な発現が確認されており,胎盤の獲得と進化の要因として内在性レトロウイルスが注目されてきている.しかし,有胎盤哺乳類の出現が1億年以上前であるのに対し,これらの内在性レトロウイルスが獲得された時期は1200万~4000万年前の間とみられており,時間的に大きな隔たりがある.本稿では,近年の研究で明らかになってきたこれらの内在性レトロウイルスの発現動態の共通性を紹介し,既存遺伝子から内在性レトロウイルスへの機能の譲渡(バトンタッチ)という考え方を用いてこの時間的な隔たりを埋めてみたい.