- 著者
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新井 恒雄
鈴木 陽介
菅原 吉隆
中藤 善次郎
穂坂 邦大
中橋 昌弘
- 出版者
- 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
- 雑誌
- 関東甲信越ブロック理学療法士学会 第26回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
- 巻号頁・発行日
- pp.16, 2007 (Released:2007-07-30)
【目的】
第5中足骨基部骨折は足部の中でも高頻度に見られる骨折の1つである。転位の軽度な骨折には、ギプス固定などによる保存的治療が選択されることが多い。しかし、こうした固定は屋内等履物を変える頻度の多い日本人には馴染まない。また、足関節の拘縮や松葉杖使用による活動制限が生じる。今回我々は、この骨折に対しテーピング誘導により、早期から歩行を許可する保存的療法を施行し、良好な成績を得たので報告する。
【方法】
対象は手術適応のない第5中足骨基部骨折8例を対象とした。内訳は男性が5例6足、女性が3例3足、年齢は14歳から65歳平均46.3歳。受傷してからテーピング開始までの期間は0日から15日の平均は6.5日。受傷原因としては転落が3足、転倒が4足、交通事故が2足、いずれも内返しによる受傷であった。
今回テーピングは後足部回内位、外果挙上。前足部は第5列外がえし誘導、第1列底屈誘導を実施した。歩行時の第5列への荷重をMedicapteurs社製Win-podで足圧として確認、測定した。
【結果】
テーピング期間28~67日(平均38.4日)。疼痛除去期間 8~47日(平均38.4日)。骨癒合期間21~41日(平均30.4日)。合併症 可動域制限、偽関節、皮膚症状 なし。テーピング後、立位歩行時の足圧は内側へ移動、足趾の推進機能も働いた。
【考察】
第5中足骨基部骨折患者は足部外側への荷重により疼痛が生じる。外側荷重痛は骨折部に対するメカニカルストレスであり、骨癒合を促すため立位、歩行ではこれを回避しなければならない。そのため足部内側荷重を促す必要があるが、一般的な外反固定のテーピングでは、身体重心や足圧中心をふまえた歩行分析をすることはない。こうした立脚期中の前足部機能が働かない足部機能が低下した跛行は、骨癒合が得られた後も継続することが見うけられる。よって、跛行を防止する為には骨折部へのメカニカルストレスを抑えつつ、最大限足部の機能を働かせる必要がある。テーピング後の歩行では、内側に足圧が移動しながらも前側部、足趾への荷重が促されている。担当医とレントゲンでの骨癒合を確認しながら歩行分析を行いテーピング誘導することで、跛行を回避することが可能になったと考える。
【まとめ】
転位の軽度な第5中足骨基部骨折に対し、テーピング誘導による保存的治療を施行した。松葉杖を使うことなく除痛、早期荷重、良好な骨癒合を得て、骨癒合後の跛行もなかった。第5中足骨基部骨折の保存療法の1つとして、動作分析を行いながらのテーピングは有効な治療法と考える。