著者
中江 誠 藤本 一美
出版者
公益社団法人日本理学療法士協会
雑誌
日本理学療法学術大会 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.2004, pp.G0553-G0553, 2005

【目的】教員が教授方法について学ぶFaculty Development(以下FD)は臨床経験とともに教員条件としては双璧である。しかしながら厚労省の教員基準は「臨床経験が5年以上」のみであり、本来有する個人の教授能力については未知数である。そういう観点から今回教員一年生として講義を担当し、それが当該科目テスト成績にどう影響するかを見ることで、FDが教育機関としての組織的な戦略上必要な視点となりうるかを検証してみた。<BR>【方法】当学院理学療法学科1年82名を対象とした。方法は「理学療法概論」の講義を通じ、当該テスト終了後に学生に対し無記名設問形式にて全般的な理解度(以下全体)とその講義の構成因子として1)講義中の言語理解(以下言語)2)使用資料の量(以下資料)3)プレゼン方法(以下プレゼン)4)座学と実技の比較(以下実技)5)授業時間(以下時間)6)全体の進捗性(以下進捗性)について10段階評定をチェック形式で行った。記述テスト結果に基づき、Aランク(80点以上:10名)Bランク(70点以上:13名)Cランク(60点以上:19名)Dランク(59点以下:40名)の4段階に層化し、設問により得た構成因子の評定数値と層化した各ランクとの関連をみた。<BR>【結果】ランク別評定値はA 4.35±0.19 B 3.77±0.38 C 3.84±0.26 D 3.67±0.23であり、A-C間(p<0.05)およびA-D間(p<0.01)で有意差を認めた。また各構成因子では、実技および(A-D間p<0.01、A-C間p<0.05)言語(A-C、A-D間p<0.01、A-B間p<0.05)で有意差を認めた。<BR>【考察】入学し最初に接する専門分野科目である理学療法概論の主たる目的は、「理学療法士としてのやりがい感を惹起させる」重要な位置づけにある。その講義形態は主に認知領域教育であるがゆえ、ほぼ一般人と同レベルの時期にある学生への理解度を深めるため、教授方法に工夫を加えることは必須である。同時に教員歴のない理学療法士にとって、如何に講義をシリーズ化していくかという労力は、個人的度量の域を超えるものである。今回、実技と言語に有意差を認めた。これは認知領域にとどまらず、精神運動領域も含めた教育方法に工夫を要することが示唆された。本来、教育は非アルゴリズム性を有するが、単に座学で終始するのではなく、多角的教育の必要性を裏付けていると考える。<BR>【まとめ】FDは理学療法学生教育上、組織的に取り組む必要性を認めた。