著者
竹林 征三 中済 孝雄
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.437-451, 1995-06-09 (Released:2010-06-15)
参考文献数
16

野洲川は近江太郎と呼ばれる琵琶湖最大の流入河川である。上中流域は、風化花崗岩地帯で土砂流出が多く、そのため、下流域は典型的な天井川で、古来より破堤の歴史を繰り返してきた。野洲川の決潰記録は南北流がほぼ固定された14世紀から野洲川放水路が新たに開削されるまでの間に74回に及ぶ。洪水破堤記録を整理し、同じ場所が繰り返し破堤している事実を明らかにした。その箇所は河川工学的には、水衝部や断面変化部であることは教訓的である。74回の破堤記録のうち特に被害甚大で、多くの記録があるものとして、(1) 天文の戸田切れ (2) 享和2年洪水 (3) 明治18年洪水 (4) 明治29年洪水 (5) 大正2年笠原切れ (6) 昭和28年台風13号 (7) 昭和40年の水害を抽出し、被害を整理し、教訓・意義を考察した。