著者
丸山 泰貴 及川 哲郎 花輪 壽彦 小田口 浩
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.66-70, 2021 (Released:2022-05-17)
参考文献数
14

多汗症の治療は漢方治療を含め複数の選択肢が存在しているが,無汗症は一部の疾患でステロイドの有効性が指摘されているのみであり,現代医学的に治療が難しくかつ漢方治療の臨床報告は少ない。発汗低下を訴える症例に対して桂枝加黄耆湯加防風白朮が有効であった症例を経験したために報告する。 症例は69歳女性。発汗の減少,体温感覚の異常を主訴に201X 年6月に当研究所を受診。近医で種々の漢方薬を処方されたが改善がなかった。発汗できず皮下に水気がたまっている病態と考えて桂枝加黄耆湯加味方を処方したところ,汗がでるようになり体温感覚の異常は改善した。大塚敬節は『金匱要略講話』で,「黄耆というものは,まるきり反対の水が多い場合と水がない場合の二つの場合に効くということが云えます。」と述べている。本症例のような発汗障害では漢方治療,特に黄耆を含む処方は有効であると考えられる。