著者
今出 圭祐 共田 圭吾 藤戸 幹雄 木谷 庸ニ
出版者
日本デザイン学会
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
vol.59, 2012

既存の経験価値研究では、経験価値創造において“物語”を活用することが提唱されているが、その原理や効果については明確にされないまま使用されている。本研究では、文化人類学や組織論、ブランド研究、文学論、実施事例など、多角的な視点から物語を整理し、経験価値創造に物語を活用するための新しい視点を提示した。 本研究では、経験価値における“物語”を、“情報としての物語”と“実経験としての物語”の二つに分類した。 “実経験としての物語”に対しては、先行研究として「ディズニーランド」と「祭り」に対しての文化人類学研究と、お化け屋敷の実施研究の成果に加え、事例研究を通して、その原理と効果を示した。 “情報としての物語”に対しては、文学論、ブランド研究、感性工学、ストーリーテリングでの先行研究に、映画鑑賞経験の現象学的アプローチによる分析結果を加えて、その効果と原理を示した。 この2方向からの研究アプローチにより、既存の経験価値研究に対して、日常から非日常世界へ「行って帰る」構造を持つ物語経験が、集団の連帯感を形成する事を指摘した。一方で、「近づきがたさ」の感情を与えるデメリットがあることも示唆された。