著者
伊藤 徳正
出版者
愛知学院大学
雑誌
地域分析 : 愛知学院大学経営研究所々報 (ISSN:02859084)
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.25-41, 2007-03-31

1928年に,実験物理学者のパーシー・ブリッジマンは,『現代物理学の論理』を発表し,操作主義を提唱した。操作主義とは,「概念の正当なる定義は,そのものの特性によるのではなく,実際の操作によるのである」というものである。この後,心理学や社会学,哲学など様々な分野に操作主義が応用された。ベドフォードは『利益決定論』で,利益概念の本質を明らかにするための方法論として,利益概念に操作主義を適用した。操作的概念は,企業の「経営活動」に適用され,企業の利益創出活動から利益計算をする会計の枠組みを提唱した。バッターは,『資金会計論』の中で,操作主義を取り入れて会計理論上の用語を定義し,会計報告の新たな理論を提唱した。マテシッチの『会計と分析的方法』での理論展開には,スティーヴンスの心理学における操作主義的展開の影響が見られる。プリンスは『会計理論の拡大』で,操作的アプローチは会計理論の現存実体の精細化に妥当な方法であるが,現行の構造を社会会計,政府会計及び管理会計を包括する一般理論に変えるには妥当ではないと批判している。ここで見た会計理論は,どれも学際的アプローチの流れの中で操作主義を取り入れたものであり,操作主義を取り入れることによって,新たな会計理論の構築が可能になった。