- 著者
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伊賀 浩輔
窪 友瑛
志水 学
- 出版者
- 公益社団法人 日本繁殖生物学会
- 雑誌
- 日本繁殖生物学会 講演要旨集 第111回日本繁殖生物学会大会
- 巻号頁・発行日
- pp.P-89, 2018 (Released:2018-09-21)
【目的】複数産子の分娩後に胎盤停滞の発生リスクが高まることは周知の事実である。胎盤停滞は産褥熱,子宮修復および発情回帰の遅延,あるいは子宮内膜炎の一因となり繁殖機能の回復遅延を招く。一方,胎盤停滞牛へのプロスタグランジンF2α(PG)の投与は子宮修復の遅延を改善し,繁殖機能の回復を促すことが報告されている。そこで本研究では,双子分娩した胎盤停滞牛へのPG投与が子宮修復に及ぼす影響を調べるため,分娩後から形態的な子宮修復の状況および子宮動脈の血流動態を追跡した。【方法】両子宮角へ1胚ずつ黒毛和種受精卵を移植後,単子および双子分娩した自然哺乳下の日本短角種を供試し,単子分娩し胎盤が正常に排出された区(正常区: n=2)および双子分娩し胎盤停滞となった区(PR区: n=2)に分類した。PR区においては子宮修復を促すため,分娩後14および28日にPGを筋肉内投与した。両区とも分娩後0~40日まで超音波画像診断装置を用い,妊娠および非妊娠子宮角直径の推移,悪露の排出状況ならびに子宮動脈血流量の推移を追跡した。【結果】正常区においては分娩後の日数経過に伴い妊娠角直径および悪露は減少し,分娩後30日に非妊娠角直径と同程度になり悪露も殆ど排出され,40日には妊娠前と同程度の直径まで修復し悪露も消失した。妊角側子宮動脈血流量は分娩後0日と比べ10日に21~36%まで顕著に低下し,20日に非妊角側と同程度の流量となり40日まで低値を推移した。一方,PR区においては分娩後30日に少量の悪露が認められたが,40日には両子宮角直径は妊娠前と同程度まで修復し悪露も消失した。両子宮動脈血流量は分娩後0日と比べ10日に51~90%と緩慢な低下を示したが,20日には14~28%まで顕著に低下し,その後40日まで緩慢に低下した。以上の結果から,胎盤停滞により子宮修復は遅延し子宮動脈血流量も緩慢な低下を示すが,修復途上における2回のPG投与により子宮修復は促され,分娩後40日には正常区と同程度まで修復する可能性が示唆された。