- 著者
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佐々木 優希
広田 純一
和田 風人
- 出版者
- 農村計画学会
- 雑誌
- 農村計画学会誌 (ISSN:09129731)
- 巻号頁・発行日
- vol.32, pp.203-208, 2013
- 被引用文献数
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東日本大震災の被災地では,仮設住宅の集団入居が叶わず,分散居住を強いられた地域が多く,コミュニティの維持が困難な状況となっており,活動が休止状態であったり,解散した町内会も出ている。東日本大震災から,2年が経ち,多くの地区でようやく防災集団移転促進事業などが着工に至り,住宅再建への目途が立ち始めた一方で,被災地では人口流失やコミュニティの希薄化,復興協議に対する住民の不満,浸水域の具体的な利用方法など,課題がまだ山積している。これらの課題に対処していくには,行政やNPOなどの力も重要であるが,地域住民の結束力が不可欠であり,従前から地域住民の意向集約の場であり窓口ともなる町内会への期待は高い。著者らは,既報で,東日本大震災の被災地において,住民が分散居住したことにより,コミュニティの希薄化・脆弱化の問題が顕著であり,これを避けるための手段として町内会単位の情報共有や集落行事の再開,復興協議の重要性を指摘した。過去の震災復興の例では,山崎や北後らは自治会に対応する小さなスケールを単位で既存集落の居住者構成や空間構成に配慮することが住宅再建後のコミュニティの持続・継承に寄与すると指摘している。さらに北後らは,その条件として従前の路地空間への配慮,仮設団地の地区内での確保,地縁的コミュニティの継続,事業計画の決定前の住民との協議の重要性などを指摘している。しかし,これらの調査は震災から10年以上経過した後のものであり,内容も事業の手法に関する指摘が多い。また,仮設住宅内や災害公営住宅のコミュニティに関しては優れた研究が多いものの,元の自治会・町内会のコミュニティの変容に関する研究は少ない。そこで本研究では,東日本大震災の大津波によって甚大な被害を受けた岩手県釜石市の町内会を対象とし,町内会会員の分散状況とその把握状況,震災前後の町内会行事の変化,復興に向けての行政との協議状況を調査し町内会の現状と課題を整理することを目的とする。