著者
亀井 良則 杉野 博之 佐藤 二朗
出版者
岡山県水産試験場
雑誌
岡山県水産試験場報告 (ISSN:09129219)
巻号頁・発行日
no.23, pp.15-19, 2008-11

鉄鋼スラグの藻場造成基質としての機能評価。近年、瀬戸内海では海砂の採取が禁止され、従来種々の建設骨材として使用されていた海砂が入手困難になりつつあるため、海砂を用いない建設骨材の開発が行われている。水産資源の増殖に有効な人工魚礁においても、原材料に砂の混合が必要なコンクリートが使われており、コンクリートに代わる素材が開発されてきた。中には、環境改善に有効な素材の開発も行われており、水産分野では、廃材を用いた藻場造成基質が開発され、その効果の実証が行われている。瀬戸内海沿岸部の岩礁帯において、藻場造成の対象となるのは、褐藻類ヒバマタ目ホンダワラ科の藻類が形成するガラモ場である。その役割は多様な生物の保育場、産卵場、餌場であり、沿岸魚介類の維持、培養に重要であると考えられている。また、ホンダワラ類の群落は、沿岸域の主要な一次生産者として高い基礎生産力を有し、高密度で成育するため、栄養塩及び二酸化炭素の吸収能力が高く、沿岸域の水質・底質浄化に重要な役割を持つ。本研究は、人工魚礁の新しい素材として、鉄鋼製造過程の副産物として県内で生成される製鋼スラグを用いて製造された藻場造成礁の有効性を検証した。