著者
佐藤 公明 原 寛道(MD)
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 第28回九州理学療法士・作業療法士合同学会 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
pp.67, 2006 (Released:2007-05-01)

【はじめに】現在筋緊張緩和の方法には幾つかの方法があり、当園ではストレッチブロック法(以下SBM)を継続的に行っている(第19回九州PT・OT合同学会にて発表)。今回SBMにより下肢の筋緊張が緩和され、作業の効率が上がった症例を経験したので、考察を加え報告する。【対象】男性38歳、診断名は脳性麻痺(痙直型四肢麻痺)。ADLは全て自立されている。移動は、電動車椅子を使用している。仕事内容は椅子に座っての品物の袋詰め作業で仕事の頻度は週に5日、計16時間である。SBM施行後の効果の持続は約4日間である。【方法】ストレッチブロック前後に袋詰め動作を行ってもらった。(方法1)ふりかけ3袋を封筒に入れる作業を行ってもらう→1つ作るのにかかる時間を計測した。(方法2)ふりかけ3袋を封筒にいれる作業を5分間行ってもらう→5分間作業の持続性を調べた。その動作の粗大運動をデジタルビデオカメラで撮影し評価した。仕事に関する内容については症例より情報収集した。【結果】方法1について以前はSBM前では49秒、SBM後は25秒と大幅に短縮した。現在はSBM前で26秒、SBM後は13秒とさらに短縮した.方法2はSBM前では10袋出来たのに対して、SBM後では15袋出来るようになった。袋詰め作業に関してSBM前では、左手の手背部で封筒を押さえており、押さえる位置は、封筒の口近くを押さえている。SBM後では、指先で押さえられるようになっており、押さえる位置は、封筒の中央部近くを押さえている。Popliteal Angle(以下PoA)はSBM前後で右のPoAは50度から30度へ、左のPoAは55度から35度へ変化した。手指の動きについて左母指以外の4指同時の伸展動作では、SBM後は完全伸展が可能になった。【考察】SBMを施行することでハムストリングスの筋緊張が緩和した。このことが骨盤を起こしやすくなるなど座位の安定につながった。また体幹や上肢に見られていた過剰な筋活動が無くなり、本来症例が持っている体幹機能を発揮しやすくなった。その事が封筒の中央部を指尖で押さえるなど、両上肢の操作性に繋がった。結果として、袋詰め作業時間の大幅な短縮が見られた。そのことが作業効率の向上に繋がったのではないかと思われる。さらに筋緊張緩和が継続することで、作業時間の短縮も見られた。症例の実際の仕事においても筋緊張の緩和によって、1時間に50個ほどしかできなかったのが、100個作れるなど実際の場面においても向上している結果ともなった。筋緊張緩和によって楽に作業が出来るようになった事で、仕事のモチベーションが向上し、現在も仕事を継続されている。【まとめ】今回、実際に症例が筋緊張の高い中で、努力的に仕事をしていたのか知る機会となった。また筋緊張が緩和する事が症例にとっていかに楽に仕事ができ、高い満足度を得る結果ともなった。今後もこの結果を継続させていき、日々仕事が充実して行えるような支援をしていきたいと思っている。