著者
吉村 浩一 佐藤 壮平
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 = Bulletin of Faculty of Letters, Hosei University (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
no.69, pp.87-105, 2014

映画やアニメーションに滑らかな動きを知覚する理由を説明するのにいくつか異なる説がある。知覚心理学的観点から,われわれはこの問題に対し,仮現運動説に焦点を当てて検討する。2013年 8月 25日に著者らが計画して法政大学で研究会を開催したことが,本研究の出発点となった。研究会にはパネリストとして,知覚心理学者以外に,アニメーション教育に携わるアニメ映画制作者や画像工学者も招いた。われわれが主張した最重要な論点は,Braddick(1974)による,仮現運動を短いレンジと長いレンジに分けるべきだとする主張である。彼の考えを受けて,映像研究者のAnderson & Anderson(1993)は,映画における動きの知覚は,長いレンジではなく短いレンジの仮現運動によって生じると主張した。しかしながらこの二分法は,知覚心理学分野ではその後批判され,短いレンジの仮現運動の代わりに一次運動という新しい概念が提案されている。にもかかわらずわれわれは,一次運動と短いレンジの仮現運動がほぼ共通する処理であるとの証拠を指摘し,映画やアニメーションにおける動きの知覚は短いレンジの仮現運動によると結論づけた。最終節では,研究会において発言したパネリストや参加者による多くの示唆に富むコメントを引用した。There are some different theories to explain the reason why we perceive smooth motion in movies and animations. From the perceptual psychological point of view, we can focus on the apparent motion theory to this problem. The meeting which was planned by us and held in Hosei University on August 25, 2013 became the starting point of the present study. As the panelists, we invited some animation movie producers engaged in animation education and an image engineer as well as perceptual psychologists. One of the most important points at issue which we insisted was the Braddick's(1974) claim, in which he divided apparent motion into short-range and long-range ones. Based on his idea, Anderson & Anderson(1993), movie researches, insisted that the short-range apparent motion, not the long-rangone, causes motion perception in movies. This dichotomy, however, was received severe criticism in the field of perceptual psychology, and new concept called first-order motion is suggested for the short-range apparent motion. Nevertheless, we pointed out a lot of evidence that the low-level processing and the short-range apparent motion have almost common processes and concluded that the short-range apparent motion would be responsible for the motion perception in movies and animations. In the last section, we quoted some suggestive comments by the panelists and the participants of the meeting.
著者
吉村 浩一 佐藤 壮平
出版者
法政大学文学部
雑誌
法政大学文学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Letters, Hosei University (ISSN:04412486)
巻号頁・発行日
vol.69, pp.87-105, 2014-10

映画やアニメーションに滑らかな動きを知覚する理由を説明するのにいくつか異なる説がある。知覚心理学的観点から,われわれはこの問題に対し,仮現運動説に焦点を当てて検討する。2013年 8月 25日に著者らが計画して法政大学で研究会を開催したことが,本研究の出発点となった。研究会にはパネリストとして,知覚心理学者以外に,アニメーション教育に携わるアニメ映画制作者や画像工学者も招いた。われわれが主張した最重要な論点は,Braddick(1974)による,仮現運動を短いレンジと長いレンジに分けるべきだとする主張である。彼の考えを受けて,映像研究者のAnderson & Anderson(1993)は,映画における動きの知覚は,長いレンジではなく短いレンジの仮現運動によって生じると主張した。しかしながらこの二分法は,知覚心理学分野ではその後批判され,短いレンジの仮現運動の代わりに一次運動という新しい概念が提案されている。にもかかわらずわれわれは,一次運動と短いレンジの仮現運動がほぼ共通する処理であるとの証拠を指摘し,映画やアニメーションにおける動きの知覚は短いレンジの仮現運動によると結論づけた。最終節では,研究会において発言したパネリストや参加者による多くの示唆に富むコメントを引用した。