著者
佐藤,慶幸
出版者
国際ボランティア学会
雑誌
ボランティア学研究
巻号頁・発行日
vol.3, 2002-11-01

公共性とは、各個人が各自の社会生活を営む過程で、<私>のものとして蓄えたものを、一定のルールにもとづく他者との相互作用関係のなかで、言説と行為として表出するところの、公開的な社会空間である、と定義する。公共性の類型として、市民的公共性、公的公共性、そして共同体的公共性を提示し、これら三つの公共性の関係について論及する。市民的公共性は、多様なアソシエーション個体群から形成され、「市民社会」の基本的構成要素をなす。この市民社会は、非市場経済的(非営利的)、かつ非政府的なアソシエーションからなるという点で、それは労働・資本・商品などの市場によって方向づけられる資本主義社会としての「市民社会」とは異なる。本論で用いる市民社会概念は、資本主義社会における非資本主義的構造としての市民社会である。民主的国家においては、国家は言論の府としての国会をとおして公的公共性を形成し、官僚制機構をとおして公的公共政策を遂行し、国民生活に大きな影響を与える。しかし、日本の場合、この公的公共性と市民的公共性との関係に対して、共同体的公共性が介入し公的公共性のあり方に大きな影響を与えている。しかし、歴史の大きな流れは、公権力と結びついた共同体的公共性が、市民革命や市民運動をとおして、個人の人権と生命の尊重を基盤とする、自由で平等主義的な市民的公共性へと転換していく方向にある。この転換を可能にするのが、アソシエーション革命であり、ボランティア活動である。