著者
保武 雄真 三毛門 佳彦 衛藤 英一 多賀 聡 矢野 公一
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.36, no.5, pp.919-922, 2016-07-31 (Released:2016-12-28)
参考文献数
10

症例は59歳,男性。作業着の清掃に用いるエアコンプレッサーを作業着の上から肛門部に押し当てられた状態で空気を噴射され受傷した。腹部膨満感と腹痛が持続するため当院救急外来を受診。胸腹部単純X線および腹部CT検査にて腹腔内に大量の遊離ガス像を認め,下部消化管穿孔が疑われた。初診時は腹部症状軽度であったため,準緊急的に手術を施行した。腹膜翻転部より約5cm口側の直腸前壁に約3cmの裂創を認め,周囲に便汁の漏出を認めた。Hartmann手術を施行し,損傷範囲の大腸部分切除および人工肛門造設を行った。術後経過は良好で術後14日目に退院となった。圧搾空気による腸管穿孔はS状結腸穿孔の報告が最も多いが多発穿孔や遠隔部位穿孔も報告されている。本症例では直腸に穿孔を認めたが,便や憩室など腸管の状態,圧損傷の好発部位を念頭に下部消化管全域における慎重な穿孔部位検索が重要であると考えられた。