著者
倉阪 英恵
出版者
奈良大学大学院
雑誌
奈良大学大学院研究年報 (ISSN:13420453)
巻号頁・発行日
no.8, pp.94-98, 2003-03

シストルムは、楽器分類法において体鳴楽器の棒繋式ラットルに属する。古代エジプトでは、主に儀式用の楽器として古くから用いられ、王朝時代を通して変遷しながらも絶えず続いた。現在でもエチオピアのギリシア正教会で用いられている。他の楽器と比べてこんなに長く続いたのは、シストルムのみである。そこで、総合的(考古学・美術学・言語学)にシストルムの変遷や地域性を分析し王や女性神官との関係、用い方で長く存在した理由を明らかにするのが目的である。しかし、研究するにあたり問題が生じる。遺物が発見された際、コレクションとして持ち去られたためどこから出土したのかわからないのがほとんどである。今後の発掘で出土地や出土状況が詳細となり、考古学的な視点での研究がより明確になることを期待する。