著者
光岡 香菜子
巻号頁・発行日
2019-03-31

本研究では、地方公共団体の会議録の分析と関係者へのインタビューにより、地方公共団体における同性パートナーシップ証明制度の導入の経緯を分析し、その過程の変化を明らかにした。同性パートナーシップ証明制度を制定する地方公共団体が、2015 年以降、徐々に増えた。この制度は、東京都渋谷区のように条例、あるいは東京都世田谷区のように要綱を法的な根拠としていた。2018 年 12 月時点では、渋谷区や世田谷区を含め、9 つの地方公共団体で同性パートナーシップ証明制度が実施されていた。この動きの背景には、2000 年代より、地方公共団体の人権や男女共生に関する計画や指針などにおいて、性の多様性への配慮が求められるようになっていたことがある。民間企業においても、セクシュアルマイノリティに関するサービス等が、従業員および顧客に対して始まっていた。さらに、セクシュアルマイノリティ当事者や支援者による、市民活動も急激に活発化していた。地方公共団体における同性パートナーシップ証明制度制定の動きは、初めは首長や議員からの提案がきっかけになっていたが、2017 年の札幌市での制定前後から、札幌市に代表されるように、セクシュアルマイノリティ当事者や支援者による市民団体が主導的な役割を果たす事例が増えていた。本研究から、初めはセクシュアルマイノリティを対象とした運動から、多様な性自認と性的指向を尊重する視点が生まれていることが判明した。